速けりゃ良いってもんじゃないぞ
ナマケモノの移動速度は時速0.6km。さすがだな。
カメの速度と大して変わらない。
逆にチーターなどは時速100km以上、ある種のアマツバメは200km
ハヤブサの急降下は300kmに達するといわれている。
また水中でもバショウカジキは100km以上出すといわれている。
それにしたってそんなに急いでどこにいくというのか…?
そりゃ餌を捕りにいったりする場合だろうけど、それにしたって
そこまでのスピード出すには相当のエネルギー要るだろ。
緊急回避にしたって、そこまでやらないといかんのか?
(そこまで無茶苦茶なスピード出す相手がいるから、仕方なく
そういう方向に進化するかもしれないのだが)
それにもう1つ根本的な問題がある。
どこまで凄いスピード出す生物も、所詮筋肉で動いている。
で、これほどのエネルギーを出すには無機呼吸ではむずかしい。
つまり酸素呼吸する必要がある。
ところがだ。
これほどの速さで運動するとしたら、そのために必要な酸素を
十分取り込み筋肉に送ることが難しくなってしまう。
人間でも、ものすごく速く走ったら息が切れるだろ。
アレはどういうメカニズムかって言うとだ。
酸素呼吸で追いつかなくなったら、一時的にエネルギー源のブドウ糖を
乳酸に分解する経路をつかってエネルギーを取り出す。
で、あとで乳酸を分解するというわけだ。
鳥類は便利だがなあ。気のうと呼ばれる袋が肺につながってたりする。
哺乳類より大分酸素は取り込みやすく、さらに酸素呼吸のための
ミトコンドリアの性能も高い。
じゃあカメとかは何が有利だって言うんだ?
高速で運動する方が有利じゃないか?
…乳酸を使う経路には問題もある。
足がつる、というのは乳酸などが大量にたまってきちんと筋肉が
動かせなくなる状態だが、そんな状態になったら動けない。
途中で休むしかない。
それにすばやく動くには、ゆっくり動くよりエネルギーが必要である。
とはいえ、ゆっくり動く場合は車のローギアのようにトルクが必要だ。
カメの筋肉は、実は低速時の運動に特化している。
そして全生物中でも最高クラスのエネルギー転換効率を有している。
ウサギとカメがフルマラソンすることを想定してみる。
10km突っ走ったウサギが筋肉痛でダウン。
カメが後から追い抜いた。動けないウサギ。
無理して追いかけてみた。追いついたが今度は腹が減った。
「カメさん、あんた腹減らないか?」
「別に」
「べつにって、…何であんた平気なんだよ?」
「何でって言われてもなあ…」
仕方ないので途中で飯にするウサギ。
当然どんどん先にいくカメ。またウサギが追いかける。
何とか追いついた。しかし。
「…フルマラソンってのは失敗だったな」
「なんで?」
「だってもう日が暮れちまったよ…」
「…それは考えなかった」
カメの足ではフルマラソン一日で走破するのは無理だったとさ。
話は変わるが、ナマケモノの場合筋肉が単純に少ないそうである。
とするとカメとナマケモノでは、動きがのろいの意味は結構変わるな。
ゆっくり力強くというのと、へろへろのろのろってのは同じじゃない。